第5章 視線
【幻想叶side】
個性の使い方が上手くできなかった頃、色んなヒーローの情報をノートに書き留めていた。
授業の内容や結果はもちろん
自分に個性の似ているヒーロー、正反対に似ていないヒーロー。
どうしたら勝てるのか、何をしてしまったら負けるのか。
他にも色々な情報を書き留めて、自分なりに分析をしていた。
完全なるお節介、
だけど一年の授業を全く受けていない心操には役に立つと思った。
すごく…迷惑そうだったな。
ノートを渡した時の幻想の顔を思い出した。
体育祭で心操の事を知ってからずっと応援していた。
ずっと待っていた。
心操ががむしゃらに努力する姿に勇気づけられていた。
一緒に頑張りたくて…力になりたかった。
私はあまり言葉にするのが得意じゃない。
こういう時、もっとうまく言えたらいいのに
そう考え、ため息を吐きながら椅子の背もたれに深く寄りかかる。
「…勉強しよ…」
いまいち集中力のない頭でペンを握る。
「 ガタン 」
机に向かっていると、ベランダから音がした。
窓にはカーテンが閉めてあり、外がよく見えない。
その音を不審に思った私は窓に近づいた。
窓まで数十センチのとこまで近づき、カーテンを開けようとするとあることに気付く。
「…え?」
人の姿が見えた。
「え、誰?」
クラスの誰かのいたずらかと思った。
だけど違った。
その影はよく見ると男のようで、
一瞬目が合ったそいつは、私の顔を見ると気味悪く笑い
私の頭からつま先まで舐めるように見た。
怖かった。
恐怖で声も出ず、慌てて自分の部屋を出た。
なに?誰?不審者?
どうしてここにいるの?
何が目的なの?
色んな事を考え頭が混乱してしまう。
身体から嫌な汗が吹きだして、その場にドアの前に棒立ちになっていると背後から声がした。
「幻想」
振り向くとそこには心操が立っていた。