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嘘つきのヒーロー

第32章 零れてしまう


【心操人使side】

ぼんやりとした光景が広がる
白く朧気な景色の中にあいつがいた。


幻想が、どこか知らない場所へ歩いて行ってしまう。

止めたい
止めたいのに声が出ない。

必死に手を伸ばしていると
ふとこちらに振り向いた


どこまでも透き通る、綺麗な目

それはとても悲しげで…






「心操」

名前を呼ばれ重たい瞼を開けると
そこには幻想がいた。

「あ…れ…」

白い天井に白い壁、そこは見慣れない部屋だった。


「唸ってたから声かけたの、声は出る…?」

「あー…あー…、大丈夫」


徐々にはっきりする意識の中、俺は今の状況を整理していた。


俺はあの時、何箇所か刺されて…
そう思い腕を見ると包帯が巻かれていた。

それを見て黙っていると幻想が口を開いた。


「事件の後リカバリーガールが来てくれて、治してくれてたよ。リハビリすればちゃんと動くみたい」

そう話す幻想はなんだか安心しているようだった。

「幻想…怪我とかは?」

俺がそう聞くと幻想は微かに笑って自身の目に触れた。


「無茶して個性使ったからちょっと痛い、これからもっと強化しないと」

そう言われ幻想の目を見ると目元が赤かった。

「ほんとだ、目元が少し赤いね」

俺がそう言うと幻想ははっとして目元を隠した。

「これはその…あんまり関係ないけど…」

「え、なんで?もしかしてあいつらに何かされた?」

俺は心配から幻想の顔を覗いた。



よくみるとそれは泣き腫らしたような目で
それに気づいて何も言えなくなってしまった


「心操3日間意識なかったんだよ、のどだって少し傷ついてたし」

そう言われのど元に触れると擦ったような傷跡があった。

「……死んじゃうのかと思った」

幻想は俺の顔を見ながらぽろぽろ泣いていた。
それを見てどうすればいいのか分からなくなってしまう


「えっ…いや俺生きてるよ、声だって出るし、大丈夫だよ」

そう言うと幻想は鼻をすすりながらも泣き止んでくれた。


「私あの時、あいつらの事憎くてたまらなくて殺そうとしたの」

それを聞いてあいつらにナイフを振り上げた幻想を思い出した。
そうだった、幻想はあいつらを殺そうとしていたんだ。


「だけど…心操が止めてくれたから、思い出せたよ」


そう言うと幻想は真剣な顔をして俺に言う



「ねえ心操」
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