第10章 奥州遠野一家
私は縁側に座り、見守ることにした
その時だった、ふよふよと風呂上がりのカラス天狗が通りかかった
「ふー、いい風呂であった。⋯ん?
!?リクオ様⋯!?池に⋯総大将!?何やってんですか!?」
『ねー、本当に⋯』
「サクラ様も見てないで止めてくださいよ!」
『いやよ、めんどくさい』
「いくぞリクオ。わしが見えるかの⋯」
おじいちゃんの気迫にリクオが圧される
おじいちゃんは一気に距離を詰め、刀の柄でリクオを突いた
痛そう⋯
リクオがよろめく
「て⋯てめぇ⋯」
「リクオ⋯お前には何も教えてこなかったな。妖とは⋯"畏れ"を奪うもの。
本来なら"畏怖"を与え⋯戦わずして勝つことが"理想"。
しかし妖同士の戦いとならばそれは"畏れ"のうばいあい。ま⋯言うなれば"化かし合い"じゃ。
機先を制すれば⋯それはもう勝負の決する時。それが妖の戦いの⋯"第一段階"じゃ」
そのおじいちゃんの言葉を聞き、リクオも刀を抜く
「そうだ、見せてみろ」
リクオがおじいちゃんに向かって刀を振る
だが、それを軽くかわすおじいちゃん
「ほれほれ、そっちじゃないぞいリクオや。
うむ⋯お前はどうやら見よう見まねでそこまではできとるのう。
でも⋯それだけでは無理じゃ。
古の妖は⋯次の段階をふむ」
おじいちゃんが畏れを使う
「そ⋯総大将!?な⋯何を!!」
カラス天狗が驚きを隠せずにいた
リクオが倒れる
リクオはおじいちゃんに何をされたのか理解できないようだった
「今のお前じゃ京都に行ってもどーしょもない。わかったら、ねてろ」
おじいちゃんが刀をおさめた
「総大将⋯」
「これでええ⋯」
「⋯今のそいつを覚えれば、京都に行けんだな⋯?」
リクオがゆらりと起き上がる
「⋯ほう⋯⋯なまくら刀とはいえ起きてくるとは⋯
⋯なぜ京都にそこまでこだわる?」
「⋯親父のことだよ。京都にいるんだろ⋯「羽衣狐」ってのは。
だから教えろ、じじい」
リクオが畏れを放つ
「ムウ!!」
おじいちゃんは抜刀しリクオを斬った
リクオが池に落ちる
そのままリクオが上がってくる気配はない
『リクオ!』
私はリクオを池から引き上げる
リクオは昼の姿に戻っていた