第16章 ★ Sweet Memories
残り2ピースとなった。
「はい、7ピース目! 7年目ね、悟くん」
「はいはい」
パチッとはめる。
この年は百鬼夜行があって、僕は親友を処刑したけど、言葉にし難い気持ちを胸に抱えて帰ってきたあの日も、一晩中、妻が僕のそばにいてくれた。
これでよかったんだよな、とひと言漏らすと、手をギュッと握って真っ直ぐ僕を見つめて大きく頷いた夕凪の顔を思い出す。
「よしラスト! 8ピース目」
妻が掛け声をかけて、最後は2人で一緒にピースを持った。
「せーのっ――完成!」
夕凪はとびっきりの笑顔で僕を見て拍手して喜んでる。パズルをやり始めてから3ヶ月かかったらしい。
五条の妻の役目を果たしつつ、暇を見つけては、ひとりでこそこそと和室に行ってはジグソーパズルを進めていたのかと思うと愛おしさが込み上げる。
日付は深夜0時をまわり、結婚記念日に変わった。隣に座る彼女を軽く持ち上げ、僕の膝の上に向かい合わせで座らせる。どしたの? って夕凪はきょとん顔だ。
「これまでも、これからもさ、君が最愛。世界で一番、誰よりも夕凪を愛してる」
結婚8年目にしてもう一度、プロポーズした桜の木のパネルの横で僕は彼女に愛を告げた。夕凪は少し照れていたけど、満面の笑みで僕を見つめる。
「あたしも愛してる。これからもよろしくね」
腰を抱き寄せてぎゅっと強く妻を抱きしめ、僕らはしばらく互いのぬくもりを感じ合った。
体が離れて、僕は彼女にたずねる。
「ところでさー」
「なに?」
「最近、伊地知と仲良すぎじゃなーい?」
END