第16章 ★ Sweet Memories
来たる10月31日。ハロウィンの日、高専では仮装パーティが催される。これは数年前から始まった学校行事のひとつだ。
なんでも、古びた遊園地のお化け屋敷に現れた呪霊を祓った際に、そこの経営者にひどく感謝され、それ以来、毎年ハロウィンの時期になると、その経営者からコスプレ衣装が学長に送られてくるらしい。
あたし達生徒や高専の教師は、その中から好きな衣装を選び、当日仮装をして、飲んだり食べたりしながらビンゴやゲームを楽しむ。京都校からも生徒や先生が集まってくるから、親睦会も兼ねている。
そのハロウィンパーティが2週間後に迫り、あたしは、どんな仮装をしようかと、提供されたコスプレ衣装をごそごそとチェックしていた。悟くんも一緒だ。試着も出来るようにと、それは寮の共用ルームに置いてある。
「よし、バッチリ」
鏡の前で最終チェックをする。頭には猫耳のカチューシャ、お尻にはくにゃりと上を向いたシッポが付いている。顔にはヒゲを左右に三本ずつペイントした。
黒猫の完成だ。どうかな? これでタヌキには見えないでしょ。招き猫のポーズをして振り返り、悟くんの方を見る。
「にゃんっ」
「はい、却下」
「なんで!」
「なんでじゃねーだろ。そんな恰好、高専のやつらが見たら……」
「見たら?」
目を合わせたまま、言葉を待っていたけど、向こうから視線を逸らされた。「わかんだろ?」ってイラつかれる。なんなの? 急に不機嫌な顔して。
肌の露出は全くないし、スカートも短かくない。ご丁寧にタイツまで履いてる。
髪も下ろしてるからうなじも見えないし、一体、何がご不満ですか?
普段から服装にうるさい彼氏にあたしは少しだけむくれる。