第13章 幸せのピース
「夏油先輩には感謝してるの。呪詛師になって、今やろうとしてる事は肯定出来ないけど。きっと先輩は、あたしが悟くんの恋人だったから、お腹にいたのがかつての親友の子供だったから助けてくれたんだと思う」
夕凪は感謝してるのか……。
「憎らしい奴だな。かっこつけの目立ちたがりは離反しても変わんねーか。僕のところに直接夕凪をよこさずに、探させるなんてな。けど……夕凪が今、無事に五条家にいるのは、傑のおかげかもな」
結果として傑は夕凪を僕の元に届けた。
あのメールにはhappy birthdayって書かれてたけど、つまり、夕凪が誕生日プレゼントってことだ。
パンピーを殺して幸せを奪う一方で、僕に幸せを届けるのは矛盾だろって思うけど、あいつの言う大義の根底に流れてるのは、人の幸せなのかもしれね。
戦国時代の武将が、たくさんの命を犠牲にして天下統一をはかり、大平の世を目指したように、あいつは自らの手を汚して、呪霊で人が死ぬ事がない幸せな世界を作りたいって、そんな野望があるんだろな。
秩序で人を守るべきこの世の中で、強者が弱者を守るべき呪術界で、それはあまりに意味がない非道行為だけど……。
どっちにしても人の幸せばっか願ってるとかさ、かっこつけすぎなんだよ!
――ふざけたり、最強コンビで任務をこなしたり、共に学びを受けてた教室で思ったこと何でも言い合ってた日々をふと思い出す。
「あいつの幸せは、今、どうなんだろな」
ぽつりとつぶやいたその答えを夕凪に求めたわけじゃない。けど彼女はぼんやりとそれについて考えているようだった。