第13章 幸せのピース
夕凪と宝を連れて、さらに屋敷の奥へと向かう。長老だ。お土産に菓子でも持って帰れば、少しは遺言書を持ち出した事、大目に見てくれっかなー?ってお土産渡したけどカンカン顔。
まぁ、仕方ねーかって夕凪と説教をくらう覚悟してたら、まさかの笑顔と恩赦。夕凪と顔を見合わせて喜ぶ。こんな事は初めてだ。
夕凪が1番緊張してた僕の両親達も、謝罪などなくてもいいぐらいに、快く受け入れている。
母親は予想通り僕は見えてねーのか? ってくらい、なぎちゃんに真っしぐらだ。夕凪を抱きしめて泣かせた。
「悟がもたもたしてたからよ。ほっんと、どうしようもないわね、こんなに泣かして」
今泣かしたのは僕じゃねーだろ、とは思うけど、なかなか連れ戻せなかった事に責任は感じてるから一応謝る。
「はいはい。見つけるのが遅くてすみませんでした。泣いていいなら僕も泣くけど」
「あなたの涙は見たくないから、なぎちゃんの涙を幸せに変えてあげなさいよ」
母親といつも通りの会話して、それにクスって笑う夕凪は、最初から本家の一員みたいだ。全く違和感がない。
遺言書はすげー。婚約者が妻になる頃には本家にすっかり溶け込んでるよう、シナリオがしっかり組まれてる。
「ここまであたしの事を待って下さって、本当にありがとうございました」
夕凪の凛とした声が響く。彼女は僕の婚約者として、再び五条家に住む事になった。