第13章 幸せのピース
メールはネットカフェから送信されていてメアドに返信しても不達。送信元の追跡は出来ないという。
「夏油先輩……」
「やっぱり会ってたのか。京都で探した時、わずかに見えたんだよね。夕凪と傑の残穢が」
清水寺でばったり夏油先輩と遭遇した経緯を悟くんに話した。あの時あたしは、まだまだ未熟で、何も考えずにお屋敷を飛び出して、住む所も見つからず途方に暮れてた。
夏油先輩に会ってなかったら、ひよっとしたら、あちこちうろうろ彷徨って、悪い奴にひっかかって、とんでもない目にあってたかもしれない。子供も無事に産めたかどうかわからない。
そんな事思ったら、あたしの話を聞いて、安全な場所に身を置かせてくれた夏油先輩は恩人だ。
悟くんの事だから、すぐにあたしの居場所を見つけて、誤解を解きに来ると考えたんだろう。ここまで見つからないなんて思ってなかったんじゃないかな。
「夏油先輩には感謝してるの。呪詛師になって、今やろうとしてる事は肯定出来ないけど。きっと先輩は、あたしが悟くんの恋人だったから、お腹にいたのがかつての親友の子供だったから助けてくれたんだと思う」
「憎らしい奴だな。かっこつけの目立ちたがりは離反しても変わんねーか。僕のところに直接夕凪をよこさずに、探させるなんてな。けど……夕凪が今、ここに、無事に五条家にいるのは、傑のおかげかもな」
悟くんがほんの少し、遠くを見つめた。
「あいつの幸せは、今、どうなんだろーな」
夏油先輩は呪術規定を破っている処刑対象で、二度と悟くんと同じ方向を向くことはない。特級同士でいつかぶつかり合わざるを得ない日が来るのかもしれない。
先輩の幸せはなんなのか? 呪霊がいない世界を作る事が幸せなのか? 正直よくわからない。でも、その生き方とは別に、あたし達の幸せを遠くで祝してくれているような気はする。