第13章 幸せのピース
ちょうどそのタイミングでコンコンっとノックが入り、使用人の方が紅茶を持って来てくれた。いい香り。アップルティーだ。あたしが好きなやつ。
ソーサーとカップを手に取って、美味しくいただきながらバターサンドを頬張る。悟くんと一緒に食しながら、今まで会えなかった時間、どうしてたのかとか、そんな話になった。
あたしは一度だけ、街で高専の生徒を見かけた事を話す。制服を見て懐かしくなって、つい術式で音声を拾ったと。
「高専の子たち、悟くんの話をしてたよ」
「1年のやつかな。北海道の呪霊調査あったかも。で、なんて?」
「1級呪霊を5分で祓ったって、すごいって言ってた」
「あー、そんな事もあったな」
「ほんとに5分で祓ったの?」
「時間が惜しかったんだよね、1秒でも早く祓ってオマエを探したかったから」
「……悟くん」
そうだったのか。てっきり最短で祓う記録にでもチャレンジしてるのかと思ってた。
学生達は婚約者の事も話してた。今思えばあれはあたしの事だったんだよね。その話も悟くんにすると「相手がいると公表して、パーティに集まった候補との縁談を進めないようにしてた」って言う。あたしの名前は伏せてたらしいけど。
何から何まで空回りだった自分が悲しくなる。でも、離れてる間、悟くんが何をしていたかなんて、それはもうあたしは聞く必要はない。
――悟くんは、ずっとあたしの事を想ってくれてた。