第13章 幸せのピース
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挨拶を済ませた後、離れへと移動した。悟くんも一緒だ。見ると勉強部屋だったところにベビーベッドや赤ちゃんの生活用品一式が用意されている。
「すごい」
「これでしばらくは不自由ないだろ。本屋敷の結界の中に夕凪と宝の部屋も準備するから、それまでここで」
「うん、ありがと」
早速宝をベビーベッドに寝かせた。あたしが北海道で使っていたのより大きい。ベッドメリーのスイッチを入れてやると宝が嬉しそうに手足を動かして、くるくる回るメリーを目で追ってる。可愛い。
「ちなみに僕の部屋にもベビーベッドがあるから、僕がいる時は、夜はそっちで」
「うん」
少しだけ恥ずかしい。まだ婚約前だけど、もう悟くんの部屋に行くのは公認ってことだよね。
「夕凪……」
名を呼ばれて見上げると、突然、悟くんが上から覆うように抱きしめてきた。背中に回った腕にはいつになく力が入っているような気がする。どうしたんだろ。
「悟、くん?」
「なぁ……もう、どこにも行かないよな?」
耳元から聞こえた声は、切なげで枯れたような声だった。悟くんが言ったの? って思わず顔を確かめたくなるほどに。さっきまで元気だったのにどうしたの?
泣いてはいないけどあたしの肩に顔をうずくめたまま動かない。