第12章 ★ハワイ旅行
「パームツリーって、家族愛とか守護とか幸運っていう花言葉らしい」
「花言葉? 悟くんがそんな事いうなんて珍しいね。でも……なんだか五条家にピッタリかも。悟くんもいつか当主になったらパームツリーみたいな存在になるのかな」
「さぁー、家族愛って言われてもまだわかんねーわ。けど……まーオマエの事は守ってやるよ」
「な……なに言っちゃってんの」
まるで、プロポーズみたいな言い方。遺言が開示されてから悟くんは少しだけおかしい。
顔が赤くなるのはここに来て、いったい何回目だろ。きっと夕陽より紅潮してるよね。悟くんはそんなあたしを茶化すわけでもなく、それっきり何も言ってこない。夕陽が地平線に落ちていく景色を楽しんでる。
どうしよう、いつもよりかっこよく見えるのはなんで? このロマンチックな海と夕陽のせい? ソフトクリームのイタズラでムカついた気持ちも、どっかに飛んでった。あたしってほんと単純。
そんな彼に少しだけ甘えたくなってお尻を横にずらして距離を詰める。それだけなのにドキドキする。いいかなって様子を伺いながらゆっくり彼の肩に頭をもたげる。波のザザーって音に癒される。ただこうしてるだけで幸せな気持ちになる。
あたしの様子をすこし気にかけたように悟くんの右手があたしの髪に添えられた。やばい、少女漫画みたい。
いつもならこんな事言ってくるのに……。
「彼女みたいな事できんじゃん」
「頭ん中、詰まりすぎて肩、重いわ」
「夕陽見てイチャイチャしたくなった?」
どれもムッてくるような煽り言葉だけど、何一つ言わない。ただ優しく隣で肩を貸してくれてる。いったいどうしちゃったの?