第11章 急展開
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地図に示されたその場所に降り立ってみると、草原だけで何もない。鍵が結界を通る術式にもなっていると言っていたので、鍵をその場に出してみると施設が現れた。でも、これはダミーだって話だ。施設の鍵穴に鍵を差し込むと別の家屋が現れる。
古民家のような家。けど古すぎるってことはない。一階建の平家。離れと少し似ている。洋室と和室が一つずつあって別にダイニングルームがあった。
電気や水道は通っていた。結界を挟んでも問題ないよう、解散前の教団の人たちが繋いだようだ。これらの料金だけは所有する宗教団体に払わないといけないようで、支払い先が書類に書かれている。
十分すぎる環境だった。呪詛師の力を借りてこんな風に生活するなんて、ほんとにいいのかなと思うけど、子供との生活のために割り切る事にする。
「きっと人はこうやって割り切るってことを覚えながら大人になるんだ!」
言い切って我に帰る。最近、変なひとりごとが増えている。やばいやばい。気をつけよっ。この日は掃除をして生活に必要なものを揃える事にした。
「よかったね。悟くんの親友が助けてくれたよ」
下腹部に手をあてて声をかける。ひとりごと……じゃないよね、これは声かけだ。
日用品の買い物ついでにノートを買う。目的は妊娠日記をつけるため。タイトルは、そうだな……
『夕凪、産みます!』
……ダサい。まんまだ。悟くんに絶対けなされる。って言っても、いないんだからいいか。これでいいよね? わかりやすいもん。
――悟くん、見守っててね
心の中で呟く。