第11章 急展開
夕凪が見つからねー。
「死んでねぇよな?」
何回もそう思ったけど、夕凪の母親は、それは絶対にないと言う。手紙にもそう書いてたし、僕の事が今でもきっと好きだから、その子を宿して死んだりしないって。一般人に殺されたり襲われるほど夕凪は弱くない。だから何処かで絶対生きてるって。
「そう言われましてもね、いねーんだよ、何処にも」
夕凪を探しに日本全国あちこち飛んだ。高専から課せられる過密スケジュールの任務の合間を縫って、各地へ赴く。北から南まで隅々まで捜索して、残すは小さな島々と外国くらいだ。
だけど、妊娠してる体で、夕凪が外国に行くとも思えねー。ハワイで財布をすられそうになって、海外怖いって、無下限入れてってビビって僕にくっついてたし。ちょちょっと関係者に調べてもらったけど出国履歴はなかった。
「どこ行ったんだよ」
――ひとつだけ気になる事がある。
京都に行った時、夕凪が術式を使ったような残穢を見た。日が経っていたからハッキリ見えたわけじゃねーけど多分、夕凪だ。
そして、その場所にもう一つ。
"アイツ" の残穢が見えた。接触した? それとも偶然?
その場所には古い寺が崩壊してボロボロになった跡があっただけ。手がかりになるようなものは何も残っていなかった。
これだけ見つからないとなると、"アイツ" が絡んでる可能性は否めない。そうなると厄介だ……すぐには見つからねーかもしんね。だからっていって諦めるわけにもいかねー。
まったく……。
どこまでいっても "アイツ" は僕と関わる運命なのかもな。