第10章 別れ
「すぐに本家と遺言の時に集まってた分家のメンツ揃えて」
僕は五条家全体に声をかけるべく人を集めた。急だったから少し時間を要したようで、全員揃ったのは午後5時。ひとつの部屋に本家と遺言書に関わった分家の人間を集める。
「今から五条家総動員で尊夕凪を捜索する。本家を代表して僕が全員に命ずる」
「いきなり呼びつけたと思ったらなんだ。夕凪って使用人の娘のあの子だよな?」
「あぁ、でも使用人の娘じゃない。夕凪は遺言に記されてる僕の婚約者だ。無下限を継承してる子供も多分、腹ん中にいる」
「あああ???」
全員が口あんぐりしてる。まぁそうだよな。婚約者っていうのは想定してた人間もいたみてぇだけど子供がいるのは想定外だよな。
「僕の子だから。全国くまなく捜して」
「わかった」
夕凪が妊娠していることと、婚約者っていうのは内密にするようにして、全員に捜索命令を出した。内密にするのは、夕凪の身の安全のため。五条の遺言に関わってるってことはリスクも伴う。
ここに集まってる分家の人間は遺言書に絶対の信頼を寄せてる。僕が物心つく前から、ずっと遺言書、遺言書、言い続けてきた遺言書信者みたいな親戚ばっかだから。
きっと五条のために夕凪と子供の身の安全を第一に捜索するだろう。夕凪の顔を知らない人間は分家に誰ひとりいない。
そう考えると、ひい爺さんはすげぇ人だったのかもな。こうやってもし、夕凪に……婚約者に何かあった時、五条家全体で彼女を守れるように仕組んだ上でのあの遺言内容だったのなら相当なもんだ。