第3章 使用人
桜吹雪の中、手を繋いで一緒にお庭からお屋敷まで歩いた時は、どんぐりの背比べみたいに同じような背丈だったのに、いつの間にか彼はあたしと話す時、少し見下げるようになり、その1年後にはあたしの頭をくしゃくしゃに撫で回すような、そんな大きさになっていた頃だ。
悟くんの周りにはよく女の子が集まっていて、学校に行くとたくさんプレゼントを持って帰ってくる。
五条家のすぐ近くにまで女の子が来ている時もあって、悟くんがお屋敷から出てくると、彼女達は、キラキラ目を輝かせて駆け寄ってきた。何か手渡したり話しかけたりして朝から忙しそうだ。
まさに絵に描いたような、男子達が指咥えて見てるようなハーレム状態。悟くんは女慣れしてる感じで、寄ってくる女の子たちを軽ーくあしらってた。
悟くんに続いてお屋敷から出て来るあたしを見て、どっかの誰かが気になったらしい。
「五条くんとはどういう関係?」
学校の体育館裏に呼び出されて、最初にそれを聞かれた時、なんて答えればいいのかわからなくて、呪術の事とかどこまで話していいのかわからなくて、そして、自分でもどういう関係なのかよくわからなくて、困惑したまま口を閉ざした。
すると悟くんがたまたまなのか最初からそこにいたのか、話を聞いていたようでこちらに近付いてくる。
「こいつはうちの使用人」
あたしの代わりに悟くんが女の先輩に返答した。
そっか。そうだ、あたしは五条家に仕えてる使用人だ。明確な答えを直々に頂けてあたしはそれを乱用した。
「五条くんとなに話してたの?」
「来週行われる法事の話です」
「五条くんとなんで親しいの?」
「使用人ですから」
「五条くんと近くない?」
「忘れていった体操服を届けただけです。使用人なので」
ありとあらゆる事を聞かれたけど、だいたいこの言葉でかわせる。というかこれが事実だ。たまに五条くんの事、好きなの? と聞かれたが全否定した。
使用人が次期当主を好きとかティーンズラブの読みすぎか! と心の中でつっこむ。