第10章 別れ
確かに、仮に今この話を夕凪にして同意を得たとしても、婚約の儀までの2年の間に、気持ちが変わってしまう可能性はある。
急に「あたしやっぱり無理」とか言って逃げる夕凪も想像できなくはねぇ。過去にそういった失敗例もあったらしい。
「悟の気持ちだって2年もあったらどうなるかわかんないでしょ。一度この話をなぎちゃんにしたら、もう浮気は駄目よ」
「話す前ならいいのかよ」
「いいって言ったらするの? わぁー、なぎちゃんかわいそうー。悟なんかやめとけばって伝えるわ」
「しねーよ」
「言ったわね、聞いたわよ」
「試したの?」
「遺言の秘術をちゃんと理解してるか確認したのよ。これも五条家の準備のうち」
母親は僕をなんだと思ってんだ。なんで夕凪寄りなんだよ。溺愛っぷりがひどくなってねぇか。浮気なんかしたら夕凪よりも怒り狂いそうだからな。二度と浮気出来ない体にするって変な和漢薬飲ますんだろ。
遺言に書かれていた五条家の術式相伝の秘術はもちろん理解してる。正直驚いた。そして継承に値すべき内容だった。