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【呪術廻戦】-5歳で五条家に来ました-

第10章 別れ


「写真間に合ったみてぇだな、ってなに? 寝てんの?」

 寝たふりをした。だってあんな遺言書を見た後でどんな顔していいかわかんないし、今ここでちらっと立ち聞きした長老との会話も、聞いてなかったような顔をしたい。

 薄目でちらりと悟くんを見たら、近付いてきてベッドに腰掛けた。手が伸びてきて、髪でも撫でてくれるのかなぁと思ったら……。

「寝顔がタヌキみてぇー」
 鼻をつままれてぐりぐりしてくる。
「ちょ、ちょっと何すんの、つぶれる」
 くくって悟くんが意地悪顔で笑ってる。タヌキって! タヌキって彼女に言う!?

「起きろよ、そろそろ高専戻るぞ」
「こんな起こし方ある?」
「ほかにどんな起こし方あんだよ」
「優しくとんとんって」
「そんなんじゃオマエは起きねぇだろ」

 確かにあたしは深く寝たら簡単に起きないのは認める。悟くんの言う通りだ。さすが小さい頃から見てきてきただけの事はある。言葉の返しようがなくて、ぷいっと顔を背けた。

「拗ねんなよ、じゃあ次からこうやって起こす」

 顎に手をかけられて背けた顔を悟くん側に向かされた。ゆっくり近づいてきた顔は瞬く間に至近距離になり、反射的に目を閉じるとそこにキスが落とされる。

 ――優しいキス。

 ガキくさいかと思えば、時々こういうドキっとするような事もする。悟くんは大人に変化していってるんだなぁと思う。

 遺言書を見てしまった以上、不安な気持ちは完全にぬぐえはしないけど、こんな優しいキスをしてくれるんだから、心配しなくてもいいよね。

 遺言の事は、婚約者の事は、悟くんから話を聞くまでは、考えないようにしよう。キスした後の悟くんの余裕そうな顔を見ながら、あたしはそう心に決めた。

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