第8章 夜空
どうやら花火は終了したようだ。見上げていた空には、雲の筋だけがわずかに見える。さっきまで打ち上げられていた花火の火薬と大気の層で、星は見えない。
人もまばらになり、気温が下がってきた。そろそろ俺らも帰るかと思い、立ち上がる。夕凪の手を取って引っ張り上げる。
「悟くん、最後にあれやって!」
「あれ?」
「ヒューってやつ。ここ絶対気持ちいい」
しょーもねぇーおねだりをしてきた。急に思い立ったみてぇだ。まぁーいっか。少し河川敷から外れて、人けのないところに夕凪を連れて行く。
「この辺りでいいだろ、やるぞ」
背とひざ裏に腕を回し彼女を持ち上げる。
同時に夕凪は俺の首に手を回して――
呪力操作で縦に上空へ移動した。360度パノラマの夜景が広がる。河川敷の周りにはマンションやビルが隣接していて明かりが星屑のように散らばっている。空に星がねぇから、余計に煌びやかだ。
「絶景!! すごい」
「いつも思うけど怖くねぇの?」
「怖くないよ。だって悟くんは絶対離さないでしょ、あたしのこと」
「そうだな……」
夕凪は「絶対的に信頼してます」って笑ってる。夜景見てきゃっきゃ言ってる。俺と花火見れてよかった、って、悟くんじゃなきゃ駄目だったって言ってる。
そんな愛しいオマエを離すわけねぇだろ。唯一無二のオマエを。離さねぇっていうのは、落ちないように抱えてるってそういう意味だけじゃねーからな。
◇