第8章 夜空
「じゃあ、尊より僕の方が強くなったら教えて。尊も負けられないだろうしこれは互いの能力の底上げにもなる縛りだ」
「そんなに知りたいの?」
「同じ男として興味がある」
「へぇー、負けたくないとか?」
「五条さんには勝てないだろ。けど尊が好きだと思ってる部分は知りたいかな」
「でもあたしより強くなるなんて、一生教えなくてよさそうー」
「侮るなよな。よし1年以内に聞き出す」
「もし別れちゃってたら時効ね」
「それは絶対ない」
「なんでそんな事言えるの? 五条先輩モテモテだし浮気とかあるかも」
「五条さん信じて。……尊とお似合いだよ……羨ましいくらい」
灰原と次に実践演習するのをあたしは楽しみにしてた。彼が呪術に真っ直ぐで、力をつけてきてるのを知ってたから。術式使わない実践なら1年以内にあたしを超えてくるだろうなぁって質問に答える準備してた。
だけど、
待ち受けてたのは、
あまりに残酷な現実。
もう何一つ親友に言葉を告げる事は出来なくなった。
灰原、まさかあたしに追いつこうとして、強くなろうとして無理したんじゃないよね? ちゃんと1秒で判断した? 3秒かかってない? 戦うじゃなく逃げるっていう選択した? 先回りしてその選択肢考えてた?
助けることも出来ず高められず本音も言わずお別れになってしまってごめん。灰原は高専に来て一番気が合う存在だった。彼はいつもあたしの幸せを応援してくれてたけど……君の幸せはどうだったんだろう?
もし灰原が生きていたら、あたしたちの人生は何もかも変わっていたのかな?
夏油先輩は高専にいて、七海は呪術師はクソだとか言わず、悟くんとあたしは……どうなってたんだろうな。
◇