第7章 ★誕生日
12月6日。悟くんの17才の誕生日前日となるこの日、あたしと悟くんは久しぶりに五条のお屋敷に帰省することになった。高専には3日間の休みをもらっている。
五条家の次期当主と使用人の娘――悟くんの小さい時の遊び相手。そんなふたりが恋人同士になってから初めての帰省だ。高専を出る前にもう一度念を押す。
「悟くん、わかってると思うけど――」
「五条家にはバレないようにして、だろ、わかったわかった」
「ほんとにわかった? 悟くん軽率だからいつも以上に気を張ってよ!」
「はいはい」
二度返事ばっかり返ってくるけど、ここは真剣にやってもらわないと困る。五条家には付き合ってることは絶対秘密にしないと! 誰一人、いやネズミ一匹、勘ぐられてはいけない。
さすがに使用人の娘と次期当主が付き合ってるとかバレたらあたしの立場、お母様の立場がない。いくらなんでも気まずすぎる。まだ婚約者の事は公示されてないとはいえ、五条のお屋敷には居づらいし、当主にも奥様にもなんて顔していいかわかんない。わかってるよね、悟くん?
「キスも禁止だから!」
そうにらみつけて五条家の門をくぐった。
けど、離れに来るやいなや……。
「ちょ、ちょっと悟くん、駄目だって」
「誰もこねーよ」
「お母様が来るかも」
「忙しそうにしてたし大丈夫。鍵かけたし」
「そういう事じゃなくて、五条家ではキス禁止ってさっき、ねぇ、ん…んんっ!…っっ、あっ♡…っちょっと、話、聞いて――」
「る?」っていう言葉を言い切る前に完全に唇を塞がれてしまった。
" んんんッ…♡ "
チュッなんて触れるだけの可愛いやつじゃない。唇を吸ってチュパッて離す。吸ってまた離してチュパッって。
こんな所でこんな音出して恥ずかしいって言うんだけど、そんなの聞いてくれなくて、悟くんはあたしの唇をついばむようにリップ音をさらに鳴らしながらキスしてきた。