第6章 キスの味
コンコンコン
部屋のドアを誰かがノックする。まだ身体が重だりぃ。無視してると、あの元気な声が……。
「悟くん、悟くん!」
ドアがドンドン鳴ってる。壊れるだろーが。メールで体調は問題ないって書いて送ったけど、夕凪の事だから気になって見に来たんだろうな。
いつもなら可愛い奴って嬉しくなる所だけど、絶賛恋愛オフモード中なんで、正直だりぃ。けどこのまま放っておいたらドア破壊しそうな勢い。鍵開けてとりあえず中に迎え入れることにする。
「夕凪? なんで来たの?」
そういうと思った、って顔しながら夕凪が立ってる。マジで顔見てもなんとも思わねぇな、俺、冷めた?
「ちょっと今、大事なとこなんだけど」
夕凪をそのままにしてゲームを続行する。思うようにキャラが動かねぇ。敵キャラが倒れるあと一歩のところでライフゲージが切れる。たまるのはライフじゃなくストレスだ。
「クソっ、んだよ、後もう少しだったのに」
ベッドにゲーム機を放り投げて、ふと見ると、放っておいた夕凪がラグの上にちょこんって座ってる。人の部屋に馴染むの早すぎだろ。違和感ねぇとかすごすぎ。
「悟くん、体調どうなの? 昨日、実技の最中に倒れたんでしょ? ふらふらの状態で寮に戻ったって聞いたけど」
「大したことねーよ、メールに書いたじゃん。わざわざ来るとかひょっとして俺に会いたくなった系?」
「……違うけど」
だよな。会いたくなったなんて夕凪が言うわけねぇよなぁ。俺の中の拗ね顔が顔をのぞかせる。冗談でも「うん」とか返事すれば、可愛げあんのに。