第6章 キスの味
気づくとベッドに寝かされてて家入先輩が近くに腰掛けている。
「気づいた? 大丈夫?」
「は、い……あの……」
「夏油は出て行ったよ。五条は夏油に任せよう。五条を殺したっていうのは、その術師殺しが言った言葉で、直接、夏油が見たわけではないらしいから」
……。
無気力ってこういう事を言うのかな。今、あたしに出来る事が何もない。なんて弱くてなんて非力なんだろう。
悟くんが生きれるなら代わりにあたしが死ぬ。お母様やあたしを思ってくれる親戚たちには悪いと思うけど、それくらい彼が大切なの。それがあたしなの。
そして、近くにいたら、高専にいたら、悟くんの側にいたら万が一の時は守れる事もあるんじゃないかって思ってた。だけど実際あたしは守られてばかり。今すぐ悟くんに会いたいのに会いに行く事すら出来ない。
大切な事を忘れていた。
とっても大切な事を聞いていたのに。
頭の中がカチコチに凝り固まってて、肝心な事を忘れていた。お母様から聞いていたのに。
――突然、突然死ぬのよ呪術師は