第6章 キスの味
このままではいけない。日常生活に支障が出てきてる。あたしは悟くんに返事をすることにした。悟くんと違って、周りに聞かれないちゃんと2人で話せそうな場所を選ぶ。
普段使われていない未使用の教室を発見した。ここなら人が入ってくる事はないだろう。悟くんもこれくらいの配慮をしてほしいものだ。
悟くんの事、どう思っているのか返事がしたいとメールで時間と場所を伝えると、待ち合わせの時間より8分ほど遅れて教室に入ってきた。あたしは中央に並べた机と椅子に彼を誘導する。
「なに、この机と椅子。担任と面談するみてぇ」
いちいちうるさい。でも、今はそこに構ってられなくて、真向かいになって、んんって咳払いする。
「とにかく座って」
「座ったけど」
「あの、随分と待たせちゃってごめん。悟くんとの事だけど……あたし、五条家には迷惑かけられない。だから悟くんの18歳の誕生日が来て婚約者の事がわかるまで、何も言わずにいちゃ駄目?」
「はぁ? まだその事言ってんの? 遺言なんか、はなっから守るつもりないって俺言ったよね?」
「そうだけど、あたしのせいで悟くんにそんな事させられない」
「別にオマエのせいじゃねーよ。どっちにしたって俺は遺言なんかで自分の人生決められるのはご免だ」
あたしも悟くんも黙り込んだ。
どちらも譲れない思いがある。
考えが平行線になったのがわかった。