第6章 キスの味
「おい、いつまで考えてんだ」
悟くんは最近顔を合わせるとはこう。もうあたしとの恋愛沙汰に関しては完全に開き直っていて「好きかどうかに考えるもくそもあるかよ」って普通に喋ってて、周りに気持ちを隠すつもりもないみたい。
「俺のこと、どう思ってんの?」って新歓の帰り道で聞かれて早1ヶ月。6月も終わろうとしている。「少し考えさせて」って答えたけど、さすがにこれは引き延ばしすぎかもしれない。
悟くんはあたしと付き合ってるつもりでいたんだから尚更、頭の中、クエスチョンマーク3つくらい並んでるよね。「夕凪面倒くせぇっ、早く好きって答えろよ」って思ってるよね……。
おあずけ状態で不機嫌そうにしてる悟くんを夏油先輩や家入先輩が「まぁまぁ」って言いながらなだめてるのを時々目にする。
灰原は「五条さんに何て返事したの? え、まだ答えてないの? 迷うことないじゃん! 同じ御三家でも禪院直哉より全然いいじゃん」って推してくる。比較対象が間違ってるとは思うけど。
あまり知らない術師の方にもいきなり「五条を待たせてるんだって?」って興味深げに声かけられる。大きな声で叫びたい。
――あたしのプレッシャー半端なーい!!!!
ふと顔を上げると七海がまっすぐこちらに向かって歩いてくる。尋常じゃない面持ち。何か重要なことを胸に秘めて伝えようとしている。
「尊さん、ご――」
「わかった、わかったから七海。五条先輩にはちゃんと返事するから」
「――ごごからの実践授業が自習になったと連絡が来た」
「あ、はい……午後から、自習ね。ありがと」
ダメだ。あちこちから、五条、五条、と言われてるせいで、「ご」って言葉がくると五条の五かと身構えてしまう。
重症!