第5章 いざ高専へ
悟くん、ごめんなさい。最後はあんな言い方してきたけど、勇気出して好きって言ってくれたんだよね?
今までの関係を壊すかもしれないのに好きって伝えれる悟くんはやっぱりかっこいい男の子だ。あたしが五条家に来た時から見てきたここ一番の悟くん。
歩きながらでも、騒がしい中でも好きって言ってくれてすごく嬉しかった。今、あたしの気持ちは、本音は、悟くんと一緒だよ。
全く同じ気持ち。テスト回答は全部YES。悟くんの事が好き。
――でも、それが言えなかった。
「少し考える」って答えたのは灰原のカットインがあったからではあるんだけど、でも、それだけじゃない。
あたしは、高専に来る前に、五条家に迷惑かける事はしないってお母様に告げてきたんだ。
やっぱりあたしは悟くんの婚約者の事が気になっているの。来年、悟くんが18歳の誕生日を迎えた時、開示されるっていう曽祖父様の遺言。
悟くんは遺言なんか、はなっから守るつもりないって、あのお盆の夜に言ったけど、その理由にあたしが関係してるなんてわかったら五条家はどう思うだろう?
あたしとお母様を救済してくださった当主に会わせる顔がない。可愛がってくださった奥様にも。五条家からいただいた恩を仇で返す事になる。
そんな事出来ない。悲しい思いをさせたくない。あたしはやっぱり五条家に仕える使用人の娘なんだ。
悟くんが悟くんじゃなかったらよかったのに……。
そんな事もふと思う。
でも、悟くんが五条家に生まれなければ出会わなかった。
普通の恋みたいに、好き、って言って気持ちを伝えて、飛び込んでいって、思いっきり抱きしめ合えたらいいのに。