第5章 いざ高専へ
「灰原そっち行ったよ、ホールドして」
「オッケー尊、あ、向き変わった」
あたしは教室の入り口を両手と両足で塞いで睨みをきかす。
「七海、ここは通さない」
「教室で失禁しろ、と?」
ふん、その手にはのらないぜ七海くん。あたしはゆっくりと手をどかす。
「灰原、トイレまで追って! ちゃんと連れ戻して」
今日は授業が終わった後、新入生歓迎会がある。先生のおごりで焼肉とカラオケに行くのだ。なんと先生は軍資金だけ渡して実質は学生だけの会らしい。太っ腹!
あたしと七海と灰原は新入生だから当然、参加だ。出席しないと話にならない。だけど、七海は出席に○をしたもののかなり面倒臭そうにしていた。時間外活動だとか、何だとかぶつくさ言って。
「ねぇ、灰原、七海さ、ブッチしないよね? 来るよね?」
「先輩と交流出来るいいチャンスだし、絶対七海に行かせよう」
灰原とあたしは顔を見合わせて頷く。そうして今、七海捕獲作戦が繰り広げられているのだ。
七海は「逃げませんよ」って言ってるけど、灰原がしっかり縄で七海の腰を巻いて、教室に戻ってきた。優秀だよ灰原くん! 荷物を持ってあたしたちは3人で一緒に、待ち合わせの焼肉店に向かった。
いつ何があるかわからない呪術師同士は、あまり親しくならないのかなぁと思っていたけど、あたしたち3人はこの2ヶ月弱で随分仲良くなったと思う。
そして、それは、あたしたちの学年だけでなく、他の学年や学生同士もそのようだった。現地集合だった焼肉店の前では高専の制服を身にまとった先輩達がワイワイ立ち話をしている。