第7章 22【※冨岡義勇】
「しんじっられないっ!」
正座をした義勇の前に、服を着た陽華が怒りの面持ちで、仁王立ちした。
「血鬼術に掛かって、自我を失ってる人間に、あんなこと…、」
我に返った時の状況を思い出して、軽く赤面する。そんな陽華に、義勇はいつも調子で答えた。
「それは俺も済まないと、思っている。でも、仕方がない。元はと言えば、お前が…、」
そこまで言って、義勇はポッと仄かに顔を赤くした。考えてみれば、あんな激しく責められたことなどない。
「何で、赤くなってんの?」
「いや…、今日のお前は、何時もになく、激しかった…と、」
「ちょっと、全然反省してないじゃないっ!!」
「反省はしてる…だが、後悔はしていない。……いい経験だった。」
そう言って義勇は、清々しい顔で遠くの空を見上げた。
鬼殺隊本部の空には、どこまでも続く、綺麗な青空が広がっていた。
それからしばらくの間、陽華は口を聞いてくれなかったが、義勇は首を捻るばかりだったという。
ー 22 完