第1章 Once Upon A Time
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山の裾野はわずかな射光をひきずって、
鮮やかな緑から
セピア色に塗り替わっていく。
太陽は山の陰に隠れた。
陰は、イビト山を黒く染めた。
何かの前触れのように、
草はザワザワと騒ぎ、
獣は駆けていった。
木々の隙間から、
小さな子供が見え隠れする。
子供の足取りは早い。
子供は洞穴を見つけると、
躊躇いなく入っていった。
子供は、地面に開かれた
巨大な穴の前で、立ち尽くした。
洞口から流れ込む風が、
不気味な音を立てて、
ショートカットの髪を浮き上がらせた。
子供は、深淵を覗こうとした。
さらに一歩、踏み込む。
ツタが足に絡まった。
子供は、バランスを崩して
穴に転げ落ちていった。