第12章 青き蓋はひらき、黄の旗はゆらめいた
お風呂に上がった後もびしょ濡れのまま洗面所からリビングに出ようとしたり、寝かしつけようとしたら嫌がったりといろいろ苦労した。
子供できたらこれが毎日か〜。ちょっと大変かも、と思いながら隣でスヤスヤと眠る針の寝顔を見つめる。
……でも、この顔見たら幸せだなって思うな。
針乾いたサラサラの髪を撫でる。すると、その撫でていた髪が不思議なことにするすると伸び始めた。
初めはびっくりしたがよく見ると手足も伸びて数秒して針は元の大人の姿へと戻っていた。
「…ん……さとる…?」
紫の瞳をぱちくりとさせて長いまつ毛が上に上がる。そしてその瞳はゆっくりと僕を捉える。
「どうしたの?なんかいつもより穏やかな顔してるね?」
「え?」
針にそう言われて暗くなったスマホの画面で自分の顔を確認すると、たしかにいつもよりも落ち着いた顔つきをしているような気がした。
「…ねえ悟、ひとつ聞いてもいい?」
「ん?どうしたの?」
そして針も寝起きの柔らかな声で続けて僕に問いかけるので返事をすると、それはそれは素敵な笑顔でこう言った。
「なんで私服着てないのかな?」
「………………あ。」
しまった、子供服を着せていたからサイズ合わなくて脱げたんだ。足元をごそごそさせると子供服らしき物が足に当たった。
「変態っ!!!!!」
針は半分ずつ使っていた布団を全部剥ぎ取って自分の体を包み隠した。…うーん誤解なんだけどな。
でもまぁいっか。針が元に戻ったらするって決めてたし。
僕は針が被っていた布団を上から無理やり剥がして、布団の代わりに僕が上から覆い被さった。肌が露わになった針は自分の両腕を使って慌てて体を隠すが僕はその腕も取って針の頭の上で押さえつけた。
「ねえ、針?」
「な、なに…。」
腕を押さえられて顔も体も隠せない針は真っ赤になって顔を背ける。するとちょうど僕の口元に針の耳が近づいたので、そっと呟いた。
「………針との赤ちゃん欲しいな。」
戸惑う針の唇に僕はキスをする。夜はまだまだ明けそうにない。