第10章 愛に及んで屋をつくり、鳥はなく
「へー、悠仁くん七海さんのところにいるんだ。」
夏の暑さが収まる様子はまだない9月の始まり。冷房の効いた自宅で私は呑気にソファに横たわり携帯ゲームに勤しんでいた。外からはまだ微かに蝉の声が聞こえる。
「そうそう、ちょっと重めの任務もこなしてもらおうと思ってね〜。」
相変わらず五条悟も我が家にいる。…というより恋人同士になってからはこれが日常になってしまった。先生、しばらく自分の家に帰ってないんじゃないかな?
「……ところでー。」
冷凍庫の近くでアイスを物色していた先生がこちらに振り返る。手にはいちごミルク味のアイスが握られていた。
先生はアイスの袋を剥がすとこちらにスタスタと向かってくる。…あれ?食べないのかな?
「なーんで、虎杖くんじゃなくて悠仁くんになってんの?つい1ヶ月前までは虎杖くんだったじゃん。」
「んぐっ!?」
先生はアイスを私の口に容赦無用で突っ込んできた。怒ってるのかな?…いや、怒ってるな。
じわじわと唇の間に溶け始めたアイスが伝う。下に流れていく前に私は先生の手からアイスを奪い取り、溶けた部分を舐めとった。
「そりゃ、毎日一緒に過ごしてれば仲良くもなるでしょ。私が高校生相手の男の子に浮気してると思ってるの?」
すると、先生は大きく盛大にため息をついた。手で頭を押さえてなんだか少しわざとらしい。
「そうじゃなくてさぁ……」