第9章 千をこえた古はかれ不、磨かれる
「…私、中学は一般科に通っていたんだけど、普通の公立中学。どうやら物覚えがよかったみたいで他の生徒や先生から天才やら何やらと崇められていたのよ。…呪術界における五条先生みたいにね、」
小学生の頃にもしかすると自分は勉強ができるのかもしれないと悟った。そして中学で確信へと変わりそんな自分を誇らしく思っていた。
「えっ、すっげ。大学とか行こうとか思わなかったの?」
虎杖くんは驚いた様子で口に物を含みながら反応をする。そんな素直な反応が少しだけ嬉しくも過去を思い出して複雑な顔をして私は笑った。
学校で持て囃されていた私も、家に帰れば呪言師として一族の人間と少し違う能力を持って生まれた為に落ちこぼれ扱いされた。
悔しかった。
だから呪術の腕を極めたり
思った通りに発動しない能力に何度も挫けそうになった。いくら勉強ができても意味がないと気づき、高専に通うことを決めた。
「中学の頃は思ってたんだけど、高専に入って先生のバカみたいな強さ見たら呪術に学力なんて関係ないんだな〜って気づいちゃって。そこからは大学に行くなんて考えもしなくなったわね。」
…今は今で幸せだけど、やはり思うところはある。
「へ〜そうなんだ。でも普通にすごいと思うけどな。俺にこんなに勉強教えられるってことは高専でもそこそこ勉強できたんでしょ?」
しかし、その"思うところ"は虎杖くんの言葉によって霧が晴れることとなる。
あからさまに落ち込む私に虎杖くんは言葉を続ける。
「俺は今修行とか任務のことだけで必死だし、勉強と掛け持ちできてた針さんは呪術も勉強もどっちも才能あるんじゃねーの?」
ここまで会話してわかるのは彼が素直だと言うこと。だからきっとこの言葉も本心なのだろう。
「…ってこんな後輩に言われても嬉しくないかな。」
彼は困ったように笑うが私の心には強く響いた。
「……そんなことないわ、ありがとう虎杖くん。」
ダメって言われたけどほんとにしちゃおうかしら、浮気。……なんてね。
溢れそうになった涙をぐっと堪えて、私はソファから立ち上がり困りながら笑う虎杖くんに笑いかける。
「さて!ご飯も食べ終えたし気分転換に体でも動かしましょうか!毎日先生にボコボコにされる修行だけじゃ物足りないでしょう?」
心なしか、立ち上がる時にいつもよりも体が軽く感じた。