第9章 千をこえた古はかれ不、磨かれる
翌日、虎杖悠仁トレーニング部屋にて。
「おお!!すげえ!!ちょーわかりやすい。針さんって元々家庭教師かなんかやってたの?」
「ただ勉強が得意だっただけよ。」
昨日の約束通り私は虎杖くんの家庭教師をしていた。今は数Ⅰを教えているのだが、虎杖くんはどうやら数学が全般的に苦手なようだ。かなり説明に時間を有した。
…でもまあ、高専の授業スピードに合わせるならこれくらいで大丈夫かな。勉強ばっかりさせて肝心の修行が疎かになっても困るし。虎杖くんはすごいって言ってくれるけれど…。
「…………勉強ができたところで呪術界だと何の意味もないんだから。」
呪術師を志した当初のことを思い出すとふぅ、とため息が思わず出た。
本当に勉強ができるだけじゃ何一つ叶わないのよね。
「あれ〜?これってこっちの公式使うんじゃないの?」
……この男には。
ソファに並んで座る私と虎杖くんの間に後ろから無理やり割って入り込んできた先生は、虎杖くんが数式を書き込んだノートを指さす。
「うるさいわね、その式使うと後で代入したときに分数の計算になってややこしくなるでしょうが。勉強は私の方ができるんだから教免持ってない五条先生は黙ってて。」
「………………はーい。」
私がそう言うと先生はちえ〜と残念そうに後ろに下がっていった…と思いきやソファの周りをぐるりと回って私の右側にある肘掛けへと腰をかけた。
まぁいいか、と私が再び筆を取ると虎杖くんは不思議そうに私と先生を交互に見た。
「2人とも昨日なんかあった?」
「…………へっ!?」