• テキストサイズ

呪術廻戦_名前を呼ぶただそれだけで。

第8章 槿の花びらはただ一つのみ朝をむかえる




「ダメーーーーーーーーーーっ!!!!!!」

「え…?」

突然の拒否に戸惑ったのか、五条はぽかんと口を開ける。

そして先ほどまで満更でもなかったので彼を押し返す力も弱かったが、都合のいい女になり先生がもう私に興味を示さなくなるかもしれないことが怖くなった私はようやく本気で先生のことを押し返した。

先生も呆気に取られたのか、呆気なく私の手に押されて体を後ろに引いた。

「だって私都合のいい女だもん。先生私のこと抱いたら手に入れたと思ってもう私のところになんて来てくれなくなるでしょ?」

好きまで言わせておいてこんなこと考えている自分が嫌になる。拗れているのはわかってはいるが、それでも風の噂で耳にしていた五条先生と女性の話しなども相まって先生が自分に対して冷めてしまい離れてしまうことが怖かった。

「私、それならこのままでいいから先生の近くにいたい…。」

目の奥がじんじんと熱くなる。涙が出そうだ。でもこんなことで泣く面倒くさい女だなんて思われたくない…。

私は泣いていることを隠すように片手で自分の目を覆った。

「そんなこと考えてたのか…。」

先生はそう言ってしばらく何かを考え込むように静かになった。数秒後、涙目を隠す私の腕を優しく掴んで、先生の口元へと運んだ。そして手の甲に軽く口付けて少し困ったように笑う。

「針、好きだよ。君が好きだ。」

「う、嘘だもん…。好きって言えば私がすんなり言うこと聞くと思って…」

「ずっと側にいるよ、言質取る?僕は構わないけど。代償はそうだな…針の旦那さんになるとかでどう?」

意地悪そうに笑う先生はいつもの先生よりももっとずっと幼く見えた。愛しそうに優しく私の頭を撫でる彼からは愛情だけが感じられた。

…それにしても代償がだ、旦那さんだなんて。少し気が早いわ…。まぁ別にいいけどさ。

「………本当に言質取っちゃうわよ。」

「だからいいって。僕は破るつもりなんてないからね。」



「…………じゃあ、これが契約の代わり。」

私は先生に掴まれた片腕を軽く往なしてから両腕を彼の首へ回す。少し照れくさいから少しだけ足早に、先生へ口付けをした。先生はちょっとだけ驚いてからすぐに柔らかな笑みを浮かべる。

「……!………これからは、僕の名前を呼ばなくても針の側にいるよ。」
/ 193ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp