第8章 槿の花びらはただ一つのみ朝をむかえる
「ただいま〜。はい、これお土産。」
ご満悦そうな顔でまたも現れた五条先生。その手にはコンビニの袋がぶら下がっており中にはお菓子やら夜食になりそうなカップ麺などが入っているようだった。
一足先に部屋に戻っていた私はソファに腰掛けており、振り返ったついでに先生からその袋を受け取った。
中身をごそごそと漁るとそこには私が以前好きだと言っていたお菓子が入っていた。
「…………先生のくせにセンスいいじゃない。」
「針の好みは全部覚えてるよ。」
「なっ……!」
またそんなこと言う…。私が勘違いするとか思わないのかしら。思わせぶりなんだから。
しかしありがたくお菓子は頂戴する。……それにしてもやけに食料品が多いような、?
「悠仁はしばらくここから出れそうにないからね。非常食。」
「あと映画鑑賞と勉強のお供たちっス。」
先生の背後に控えめに立っていた虎杖くんがひょっこりと顔を出す。彼の顔を見ていたら先ほどまで一緒にいた野薔薇ちゃんや伏黒くんのことを思い出す。彼女たちは虎杖くんが生きていることを知らないのよね…。
「……早く強くなれるといいわね。」
「……?おっす!」
彼は一度不思議そうな顔をしたが、私の応援の言葉を素直に受け取りにかりと笑った。そんな彼を見ていたらなんだが心が暖かくなり私も思わず口元が緩んだ。
「はいはーい、じゃあもう今日は遅いから針は解散で!もう遅いから送っていくよ、悠仁は僕が戻るまでまた映画鑑賞しておいてね。」
そんな私たちの間に先生は割り込んで、まるで虎杖くんと私の間に立つパーテーションになったかのように両手を広げた。
もう遅い、という先生の言葉から時間が気になって携帯をポケットから取り出して時間を確認する。もう0時過ぎていたのね、確かに今日はもうお開きの方がよさそう。
「じゃあ、虎杖くんまた明日。おやすみなさい。」