第7章 被褐をきれども懐は玉のように美しい
「開始!」
真希さんの合図が終わるのと同時に私は先制攻撃を仕掛ける。予め用意していた釘を取り出し彼女に投げつける。釘は一直線に彼女の元へ飛んで行くが、避ける気配が全くない…。一体どんな能力……。
「"呼出"、釘3本。」
「え……………。」
彼女のその言葉と同時に釘は姿をパタリと消した。…のは一瞬で次の瞬間には彼女の目の前に現れ、勢いを無くしたそれらはぽとりと地面へ呆気なく落ちてしまった。
…今、何が起こった?
「さぁ、なんでしょう。"釘崎野薔薇"ちゃん」
「……っ!?」
なんで、目の前に!?こんな一瞬で10mあった距離を詰めることなんて…………。
「"呼出"、催涙歌。」
「ぐっ……っ……!」
………何が起きたのかよくわからない。彼女と戦った感想だ。知らぬ間に距離を詰められ知らぬ間に私は捕縛された。
私に絡みつくそのストールらしき布は心なしか体力を徐々に吸い取られている気がする。腹部を締め付けられ息苦しくなり拳を握るのも辛いほど力が抜けていく。
……ダメだ、勝てない。
そう思ったとき、するりと私を拘束していたものが解けた。
「……っはぁ!!」
「はい、私の勝ちね。このストール呪力奪い取っちゃうしこれ以上やったら野薔薇ちゃん死んじゃうからこれでおしまい。」
まだ息切れする私に彼女はにこりと笑いかけた。てか死んじゃうって……そりゃ苦しいわけね。