第6章 棣をめでるならば鄂之さきまで情をかけるべし
一方で呪術高専では。交流会に向けて相変わらず伏黒恵、釘崎野薔薇1年が2年3人組と稽古を付けて受けていた。
「…はぁ、暑いわね。交流会には涼しくなってるといいけど。」
7月の蒸し暑さに立ち眩むような日差しもすっかり落ちて、虫の声が響く夏空の下釘崎野薔薇は額に滲む汗を腕で拭う。自分を何度も投げ飛ばす巨体のパンダはニコニコと嬉しそうに笑う。
「いや涼しいんじゃないか?ほら、だってずっと回ってるから風感じるだろ。」
「その後に何回も地面に投げ落とされてんのよ!!!!!!」
いつも通りの暑苦しい2人のやりとりを遠目で他人事のように見つめる伏黒恵と禪院真希。そして近くから見守る狗巻棘…だったのだが。突如感じ取った気配に狗巻棘は思わず警戒体制を取る。
「狗巻先輩?」
さすがに違和感を感じた伏黒と真希も立ち上がり3人の近くへ寄ろうとする。しかしその正体をすぐに察した2人は、なんだと一言だけ呟いて踵を返しまた元の位置へと戻って行った。同じパンダも何者かに気づき急いで狗巻棘から距離を取る。
……ただ、釘崎野薔薇だけは状況を理解できずこちらへ突進してくる何者かにあたふたとしていた。
「え、何!?誰!?なんなの!?!!?」
「…………ツナ…。」
隣にいる狗巻先輩を見ると今まで見たことのないくらい、かなり嫌そうな顔をしていた。