第5章 人の心は一つ、つねに新しきものなり
「はぁ!?……出かけるって、私はどうすればいいのよ。」
「あー…。時間ないからとりあえず針は待ってて〜。じゃ!」
「えっ!?ちょっと!!先生!!!!!!」
止める暇もなく虎杖を軽々と脇に抱えて颯爽と去っていってしまった。ポツンと地下室に1人残される私。流れっぱなしの映画の音だけが響き、泣きながら歌う女性の声は何故か私の心を震わせた。
私もいつか彼女のように彼を失って泣いてしまう日がくるのだろうか。いや、先生に限って寿命以外で死ぬなんてことはないな。
…そもそも、私は先生が死んだ時に1番側にいて泣く資格のある女性なのだろうか。ああ、気になるな。
…………だめだ。この音楽今の私の気分をさらに落ち込ませるわ。都合のいい女なんて考えちゃダメよ針。とりあえずここから出て気分転換しましょう。
待っててと言われはしたが、ここでとは言われていない。なので私も足早にこの部屋から出ることにした。出入り口で誰の足音もないことを確認してから辺りを見渡す。誰にも見られてはいないようだ。
今度からここに通うのか、私。神経すり減りそうだな。
「……はぁ。」
恋愛から家庭教師までこれから気が遠くなるような課題が山積みだ。