第18章 今之感情と昔之感情
「どうして!?あなたまで棘と同じようにならなくてもいいのよ!?」
家に帰ると、母はリビングの椅子に腰掛けて頭を抱えながら私に訴えた。
「産まなければよかった」という幼い頃に聞いた母の言葉が脳裏に過ぎる。それでも、今の母にとって私は十分自慢できる娘に育っていたのだろう。
だから、わざわざ異端児扱いされる呪術界に行く必要などないと。そう言いたいのだろう。
それでも…。
「薄々気づいてた。もう無理だよ、"お母さん"。」
椅子に座る母を呼び出す。側で立っていた私の前に涙でボロボロになった母が現れる。母を呼び出したのは、もう随分と前のことだった。
久しぶりに呼び出された母はもっと泣きそうな顔になって、
「……危ないことしなくて、いいのよ。」
と言った。
「………………もう、遅いよ。」
初めて母の愛情を感じた頃には、私の呪力は抑えられないほど膨大に膨れ上がっていた。
そう、薄々気づいていた。
私は、呪術師としてしか生きられない。
私だって、普通に生きたかったよ。
呪言師の運命は残酷だ。