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呪術廻戦_名前を呼ぶただそれだけで。

第18章 今之感情と昔之感情



「産まなきゃよかった。」

と、聞いたのは3歳の頃。深夜に目を覚まし父と母が会話しているところをうっかり聞いてしまったのだ。


______ずっと、家が大嫌いだった。




「おかあさん。」

「…っ!!?!?………はぁ、もう…。」

それでも母が恋しくて、あまり構ってくれなかった母を呼び止めると、呪術が上手く使えなかった私は無意識に母を"呼出"してしまっていた。

驚いて目を見開いた母は、毎回ため息をつくと厳しい顔でこちらを見つめた。

"迷惑"

と自然と読み取ってしまった。


呪言という特殊な呪術を持って産まれてしまう、うちの家系。もうこんな呪術は絶やすべきではないかと考えられていたその時に私は産まれた。

私が生まれ、呪力があると知るや否や上層部は歓喜した。由緒正しき呪術が守られた、と。…しかし事はそう上手くはいかない。

私の呪言は、求められていた"それ"とは違った。

私の発した言葉には勝手に呪力が込められてしまう。誰かの名前を呼ぶと、その人に私の呪力が流れ込む。

先天性だった。喋れば勝手に"そう"なってしまう。コントロールができなくて、小さい頃はあれこれとたくさんの物や人で家を溢れさせてしまった。

呪術界からの撤退を望み一般家庭を目指す狗巻家に現れた、実害を成す子供。呪術界の期待を背負わされるも応えることができない異端。


「産まれなければよかった。」


と、母の言葉を聞いて幼い私もまたそう思ったのだった。

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