第17章 愛にかわる苦しみと離別
「ただいま。」
灯りの消えた部屋。
九十九由基の部下に連れられて、私は帰宅した。2人で寝るために買った大きなベッドに1人で倒れ込み死ぬように眠った。
壊滅した都市。いなくなった恋人。取り残されたお腹の中の子供…。この子が生まれてくる頃に幸せな未来が存在するのか、想像がつかない。
いっそ、このまま死んでしまえば…。
「……!!!…っはぁ、はぁ。」
夢すらも思い出せない、そんな真夜中に突如感じ取った強い呪力に目が覚める。辺りを警戒しても静寂に包まれており、呪霊も人も何も気配は感じない。
死んでしまえば、なんて思う割には生きることに取り憑かれている自分に嫌悪感を抱いた。本能ではまだ生きることを望んでいる。死にたい、なんて今は現実逃避だ。向き合わなければならない。
私は、ベッドから起き上がると血で汚れた服を脱ぎ捨てた。下着姿のままカーテンを開き街を見下ろす。
真っ暗だ。
「………五条悟。」
東京という街の灯りは、もう残っていない。五条悟のいないこの世界で、私は…私たちはどう生きるべきなのか。
「………たすけて。」
冷たくなった床に座り込み、1人で涙を流すことしかできなかった。