第14章 犬は吠えるもなき声は影にひそむ
今日そっち行くから。
と、1通それだけの連絡。そっけない連絡をよこしたのは五条先生だった。
先生が私の元に訪れることに対して、私は戸惑っていた。自分が弱いことに対する怒りをぶつけた罪悪感と、弟たちを囮に利用した怒りがごちゃ混ぜになっていたから。
「はぁ…。」
と思わず重たいため息が溢れる。特にどうするべきか答えはでないまま、ベッドの上で五条悟が来るのを、意味もなくただゴロゴロ転がりながら待つだけの時間が憂鬱だった。
会いたくないな。
しかし時間というものは勝手に過ぎるもので、しばらくすると私の部屋の扉をコンコンとノックする音がした。
私は扉を開けず、そのままベッドに塞ぎ込んだ。
「針ー?入るよー?」
でも、先生はいつも通り私を呼ぶ。ガチャりと扉が開く音がして、だんだんと先生の足音が近づいてくる。トントンと、その音が1番大きくなったところで、ぴたりと音が止んだ。
「寝たふりしないの。」
「別に寝たふりしてるわけじゃないし…。」
私は顔まで布団を被りそっぽを向いて、先生がいる方とは反対の壁と向き合った。
先生の姿は見えないがおそらくベッドの側で立ったまま、無意識的な溜息を小さくついていた。
それから短くも長い静けさが続いて、ぎしりとフローリングが軋む音がすると先生は重たそうに口を開いた。