【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第44章 Back to December ☆
昨日の夜、赤井さんからある提案があった。
5月25日。
ちょうどクリスマスから5ヶ月後の今日、あの日のやり直しをしようと。
人生で一番辛かったあの日の。
朝から赤井さんは用事があると言って出かけたから、現地で待ち合わせることになった。
あの時みたいに。
わたしは、あの時渡しそびれたプレゼントをカバンに入れ、あの日と同じ時間、同じ場所で彼を待った。
目を閉じるとあの日のことを思い出せる。
道行く幸せそうなカップルを眺めながら、早く来ないかなーってかじかむ手を息で温めながら待ってたっけ。
季節はもうすぐ夏。
思えば赤井さんと出会って1年が経った。
「サラ」
大好きなあの声で後ろから名前を呼ばれ、ハッと振り返るとそこには赤井さんがいた。
あの日は、変装もせずにそのままの姿でいたけど、今日はちゃんといつもの格好にサングラスをしている。
「良かった…」
ホッとして思わず思っていたことが口に出た。
あの日は、変装をしていないのは、最後だからと言っていたから。
「ん?どうした?」
赤井さんは目を丸くして、わたしが 良かった と言った真意を問う。
思わず、泣きそうになりながら赤井さんの目を見て聞いた。
「…最後じゃないよね?」
「…当たり前だ。バカ」
赤井さんはわたしの頭をくしゃっと撫でた。
どうしよう。
もうすでに泣きそうなんだから、今日が終わる頃には涙は枯れ果てているんじゃないだろうか。
赤井さんはそんなわたしの手を取って、歩き出した。
「ほら、行くぞ」
「うん!」
あの時も、こうやって最初は手を繋いでくれていた。
途中から、繋いでくれなくなったけど。
「…今日はずっと、手繋いでてくれる?」
「あぁ。勿論」
赤井さんはわたしの頭をぽんぽんと撫でながら笑った。
たったこれだけで幸せなの。
デートの初めから終わりまで、ずっと手をつないでいられるだけで。