【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第42章 Lemon
それから数ヶ月が経っても、タクミから何の連絡もなかった。
なんだ。
あの約束は簡単に破られたんだ。
もともと、いつ終わってもおかしくない関係だったし。
傷ついてなんて、いない。
傷ついてなんて…
わたしの目から涙が溢れた。
会いたい…思っちゃいけないのに、タクミに髪を撫でて欲しい。
わたしから会いに行ったら、迷惑だよね?
わかってるけど、終わるならせめて、別れ話ぐらいしてよ…
そう思って、タクミのバンドのワールドツアースケジュールを日本語検索した。
アメリカに次にくるのはいつだ?
そう思いながら。
けれどわたしの目に飛び込んできたのは。
「一ノ瀬タクミ 事故死」
「薬物中毒か?人気ベーシスト 死亡」
3日前に発表されたこの記事に、頭が真っ白になった。
それから数日経っても、タクミから連絡はなかった。
嘘だと思ってた。こんなニュース。
だって、あの人殺しても死ななそうだよ。
無心でネットの奥底まで覗く生活が、しばらく続いた。
何度調べても、タクミが死んだと言う事実が消えない。
タクミが生きてる…!そう思ったら、それは夢で、目を開けると天井が見える。
タクミの大きな背中に後ろから抱きつくのが好きだった。
目を閉じれば、タクミの笑った顔も呆れた顔も、意地悪を言う顔も、タバコを吸う時の癖も全部思い出せる。
なのに、もうこの世にいないの?
どんなに待っても、どんなに探しても、二度と会えない?
涙は枯れない。次々に溢れてくる。
思い出も、全部溢れてくる。
自分が思う以上に、タクミに恋をしていたんだ。
タクミはわたしにたくさんのことを教えた。
キスの仕方も、愛しいと思う気持ちも、
女としての幸せも、ベッドでお酒を飲む遊びも、
あのマンハッタンの目が眩むような夜景も。
タクミが最後に教えてくれたのは、
戻らない幸せがあるということ。
両親が、ずっと昔に教えてくれたのに、また…
わたしは独りになった。
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