【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第42章 Lemon
赤井side
夢なら、どれだけ良かっただろう。
「大君。おかえりなさい。」
「…ただいま」
家のドアを開けて中に入ると、そこには俺が騙し続けている女がキッチンに立ってる。
ここは諸星大 名義で借りているマンション。
そして、こいつは俺があの組織に入り込むために近づいた女。
「今日はね、シチューにしてみたの。自信作」
そう言って宮野明美は、テーブルの上にシチューを並べた。
この、生活感も何もない部屋。
当たり前だ。俺はこいつと会う日以外はここには帰っていない。
そんな、偽りだらけの俺に、こいつは何も知らず笑いかけてくる。
「おいしい?」
「あぁ。美味しいよ」
「良かった。」
馬鹿な女だ。
俺の嘘に騙されて、こんな俺のために飯を作って待っているなんて、つくづく。
だが、きっと今日が一緒に過ごす最後の夜になる。
俺は明後日、組織の幹部と会うことになっていて、いよいよFBIとしての潜入捜査の集大成となる。
だから明日、こいつに俺がFBIだと言うことを打ち明けようと思ってる。
ずっと、騙していたことも。
風呂から上がると、同じベッドで眠る。
恋人らしく、キスをして、抱いているとき、明美は必ず、言ってくる。
「大君…大好き…」
「…俺も」
嘘ばかりの俺に大好きと言い、俺はまた嘘を塗り重ねていく。
今日で終わりだ。
終わり。
そう思った瞬間、俺から言葉が漏れた。
「好きだ」
これまで一度も伝えたことはなかった。
それが、無意識のうちに口をついて出てきた。
何を考えているんだ俺は。
そう思いながら、最後に明美を抱きしめた。
これで最後だ。
何度もそう自分に言い聞かせながら。