第41章 Lover

「…何よ。」

「何じゃねぇ。
お前が俺たちを雇ったのに、お前はお咎めなしかよ？」

「…証拠、ないもの。
実際失敗したから支払いはまだだったし、依頼も電話。
録音してないなら証拠はないわよね。」

「…お前、ふざけんじゃねぇ！」


そう言って男は私を思いっきり殴り飛ばした。

自業自得。
だけどこんなの痛くない。

シュウに愛してないと言われた時の方が痛かった。

殴り飛ばされた拍子で、わたしの手からシュウの指輪が放り出されて地面に転がった。

それを、男が私を睨みながら拾う。


「か…返して！それは命より大事なものなの！」

「へぇ。そうかよ。じゃあ自分で取りに行けよ！」


そう言って男が振りかぶってそれを川に投げ捨てた。


「やめて！」


私の悲痛な叫びも虚しく、指輪はポチャン…と川の中に落ちた。

私は隣で笑う男を無視して、慌てて川の中へ入った。
あれを無くしてしまったら、私がシュウと繋がっていた証拠がひとつも無くなってしまう…

人目も憚らず、川の中でバシャバシャと音を立てて水をかき分けながら、私は必死に指輪を探し始めた。