第31章 Together ☆

赤井side


この部屋に足を踏み入れることはもう一生無いと思っていた。

だから、インターフォンを鳴らしてサラが出てくるのを待つこの時間が、まだ夢みたいだ。

たったこれだけで、どくんどくんと心臓が鳴る。

しばらくすると、やけに気の抜けた声がしたと思えばドアがガチャリと開いた。


「はあいー」


俺が緊張していることはつゆ知らず、サラは俺の顔を見ると幸せそうに笑った。


「ちゃんと誰が来たか確認してから開けなさいと、何度言えば…」


俺から咄嗟に出た言葉はそれ。

本当に進歩ないな。
そんなこと言いたいんじゃないのに。


しゅんと下を向くサラの腕を掴み、サラを抱きしめながら家の中に入った。


部屋の全部から、サラの匂いがする。


「ただいま…サラ」


もう二度と言えないと思ってた。

言った瞬間、突然喉の奥が詰まって、ごまかすみたいにサラを抱きしめる力を強めると、サラは俺の背中に腕を回して言う。


「…おかえりなさい」


俺の代わりにサラが泣いていた。

サラの涙を指で拭って相変わらず泣き虫だと言ってやると、涙で濡れたサラの瞳に俺が映ってる。

あぁ。キスしたい…

咄嗟に、キスがしたくなってゆっくり唇を近づけていく。


サラが目を閉じて俺の唇を待っている顔を見ると、俺は思わず理性を飛ばしそうになった。