【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第29章 赤い糸 ♪
しばらく歩くと、木で出来た山小屋を見つけた。
ドアは鎖と南京錠がかかっていたが、俺は背中に持っていた拳銃で撃ち抜き、鍵を開けた。
中に入ると、たまに使われている形跡があり、なんとかここなら一晩ぐらいは明かせそうだ。
暖炉もあるし、毛布もある。
ホッと胸を撫で下ろすと、背負っていたサラをゆっくり椅子の上に下ろした。
「くしゅんっ…」
「何時間ああしていたんだ。
…身体、冷たくなってる。」
可愛いくしゃみをしたサラの首元に触れると、冷たかった。
俺の冷たい手よりもずっと。
指先も氷みたいに冷たくて、俺は思わずサラの手を握って、ハァーッと自分の息を吹きかけた。
小さくて細い手。
この手も好きだった。今も…。
「何時間いたかわかんない…時計なかったし」
「スマホは?
もしかして、スマホを落として探していたのか?」
「ううん。
スマホも持ってたんだけど、崖から落ちた時に落としちゃって…」
「一体なにをそんなに必死に探してたんだよ…」
そう言って俺はサラを見ると、サラは俯いて言った。
「言えない…」
まるで、最初に出会った時みたいだな。
自分の過去も、痛みも全部最初は言ってくれなかった。
やっと、サラが自分の心の傷を俺に見せてくれたのに、俺はそのサラの傷を抉るようなことをした。
どんなことがあっても手放さない。
そう言っておきながら、あの日泣きながら手を伸ばしてくるサラに背を向けた。
自分がサラを守れなかったことを棚に上げて、逃げたんだ。