【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第22章 終わりの歌 ♪
赤井side
サラが眠りに落ち、俺はサラの髪を撫でて布団を掛け直してやると、サラのバルコニーでタバコを吸った。
俺のためにバルコニーに置いてくれた灰皿に灰を落とし、煙を夜空に向かってゆっくりと吐く。
あと数分到着が遅れていたら、サラは死んでいた。
また、同じようなことがあったら、俺は俺自身を完全に許せなくなる。
そして、仕事にも支障をきたし、10数年追いかけてきた俺が1番知りたい真実にも辿り着けない。
サラは、普通の生活がしたくて諜報員から足を洗った。
普通の生活をしていれば、こんな目に遭うこともなかっただろう。
あの日、サラを見つけたのが俺じゃなくて、普通の職業の普通の人間だったら。
俺がサラの幸せを奪っているんだと、今更気付いた。
俺が一緒にいることで、サラを危険な目に合わせるんだとしたら、それは全く本意ではない。
俺たちの関係は、まるで一本の線の上を踏み外さないように慎重に歩いているような、そんな関係だ。
少しでも風が吹くと、風に煽られてバランスを崩す。
言葉足らずで、お互いが不安になって、疑心暗鬼になって。
それでも触れ合って身体を重ねれば、幸せで上書きされていた。
だが、思えば俺は、サラにさせたくない表情をさせてばかりだった。
屈託なく笑った顔が好きなのに、必死に不安を隠して無理して笑ったり、辛いことを全て背負い込んで泣いたり、そんな顔をさせてばかり。
怪我をさせたことも何度かあったし、今回はあやうく死ぬところだった。
好きと言う気持ちだけで、何もかもうまく行く。
そんなことはありえないと、30年以上生きてきて痛いほどわかっていたはずなのに。
「潮時か…」
俺はそう呟くと、目を閉じてまた灰に煙を入れ、ふーっと真っ直ぐに飛ばした。
吐き出された煙はすこし揺れたあと、ゆっくりと夜に消えていった。
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