【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第20章 No way to say ☆ ♪
トランクに詰めて来た荷物はすぐに片付き、シンとした部屋の中で俺とサラの目が合う。
「…なんか、変な感じ。」
「そうだな」
「…コーヒー淹れよっか!」
サラはそう言ってケトルで湯を沸かし始めた。
インスタントコーヒーを淹れてもらい、それを飲みながらサラの部屋を見渡した。
「朝、ちゃんと起きれるか心配」
「お前はほっとくと昼まで起きてこないからな」
「あはは。目覚まし時計もう一つ買わなきゃ」
サラはそう言って笑う。
この家に入ってから、ずっとその笑顔だ。
泣きそうになりながら必死に我慢して、平気なフリをする。
わざとらしい明るい笑顔。
寂しいくせに、一度も寂しいと言わない。
そうか。
これからしばらくの間、俺はサラが泣いていてもすぐに抱きしめてやることができないのか。
それがものすごく怖いことに思えた。
俺がそう思っているのが顔に出ていたのか、サラがコーヒーを飲みながら俺を見て、一瞬物凄く寂しそうな顔を覗かせたのを俺は見逃さなかった。
俺は、隣に並んで甘いコーヒーを飲むサラを抱きしめた。
「そんな顔をするな。」
「…大丈夫だよね。わたしたち」
そう言うサラの声は少し震えていた。
俺は抱きしめる力を強めながら、自分にもサラにも言い聞かせるように言う。
「当たり前だ」
そう言ってキスしたサラの唇が、砂糖たっぷりのコーヒーを飲んでいたはずなのに何故か苦かった。
いつもの甘い唇じゃなくて、また非現実的な気持ちになった。