【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第18章 Call my name
「ふぅ。これで全部かな」
ポアロのバイト中、お店で出す新しいメニューに合うおしゃれな食器を探しに、わたしはファブリックショップをはしごしていた。
それにしても食器って結構重いな…安室さんにも付いてきて貰えばよかった。
そんなことを考えながら、紙袋をよいしょと持ち直して店を出た。
その時、向こうから走ってきた男と勢いよくぶつかり、わたしの持っていた紙袋は宙を舞う。
誰かとぶつかったと認識してすぐに、
ガシャーーン
と、中身が割れる音がして、わたしは思わず大きな声を出した。
「あああー!!!」
慌てて紙袋に近づくと、中からお皿の破片がポロッと落ちた。
見なくても分かる。
中は無残な姿になっている…
「ちょっと!ぶつかったのに謝りもしないの!?」
そう言いながらぶつかってきた男の方を見ると、男ははるか先に逃げている。
「待ちなさい!!」
わたしはすぐ立ち上がるとその男を全速力で追いかけた。
歩道橋の上まで追いかけ、男が慌てて歩道橋を降りたところを、わたしは歩道橋の上から飛び降り男の前に着地した。
そして男の胸ぐらを掴むと
「ちょっと!
あんたのせいでわたしのお給料から引かれちゃうんだからね?!
ポアロの時給、それでなくても安いのに、さらに引かれちゃったらわたしタダ働き同然じゃない!!」
ゆっさゆっさと男を揺らしながらそう捲し立てていると、後ろからピーーと笛の鳴る音がした。
「ん?」
振り向くと、警察官と1人の男性がわたし達の方を指差しながら走ってくる。
ヤバイ。
この状況、まるでわたしの方が加害者みたい。
そう思い逃げようとしたが時すでに遅く、警察官がその男の腕を捕まえながら言った。
「お前、常習犯のひったくりだな?!
…返せ!
…あなたの財布、これですか?」
警官はわたしになんて目もくれず、ひったくり犯から財布を取り上げ、持ち主らしい男性に渡した。
「ああ、そうです。ありがとうございます」
「運が悪かったな!ほら立て!」
目の前で手錠をかけられた男は、そのまま警察に連行されていく。
光のスピードの逮捕劇に、わたしはポツンと目を丸くして見ていた。
「…はっ!ちょっと!
結局わたしのお皿割られ損じゃない!」
そう言って警察の方を見るが、パトカーはサイレンを出して出発してしまった。